「吹屋の紅だるま 赤柚子胡椒」の製造・販売を行う”株式会社さとう紅商店”の代表取締役である佐藤拓也さんにインタビューをさせていただきました。
地域おこし協力隊として県外から高梁市に移住した佐藤さん。彼は県内中の特産品コーナーに並ぶ大ヒット商品「紅だるま」を生み出し、吹屋の地域おこしに積極的に取り組んでいます。
事業をはじめたきっかけや、商品に対する想い、吹屋でオススメの店は?など、さまざまな質問にお答えいただきました。
地域おこし協力隊として高梁市に来たきっかけ
京都出身なのですが、幼い頃から自然や魚が大好きで、魚に関係する仕事をしたいという想いから、大阪にある観賞魚用飼料を販売する会社で仕事をしていました。
そんな中、妻の出身地の高梁市に旅行した際に、水張りした田んぼや野山の新緑など自然あふれる情景に心惹かれ「住むならこんな里山にすみたいな」と強く想い焦がれるようになりました。
「自分にはなにができるだろう」と移住するための仕事を探していたところ、地域おこし協力隊の募集を見つけ応募し、ご縁があり採用してもらい、移住へと至りました。
吹屋の魅力を活かせる特産品を作りたいという想いから「赤柚子胡椒」が誕生
地域おこし協力隊の頃から吹屋の町並みに魅力は感じていて、吹屋の魅力を活かせるものを発信したい、この町並みを守りたいという想いで活動してきました。
元々、べんがら焼きとべんがら染めという染め物と焼き物の工芸品はありましたが、食べ物の特産品は無く、「なにか作れないかな」 というのがいつもの集まりでの話題だったのです。
そんな中、偶然出会ったのが隣の新見市の方が個人的に趣味で作っていた赤い柚子胡椒でした。
実際に食べてみるとすごく美味しくて「この柚子胡椒、赤色だからべんがらの町に合うだろう」と確信し、レシピを教わり、地域の青年団で作り始めて「吹屋の紅だるま」が誕生しました。
町並みを守る方法の一つとしての会社経営
赤柚子胡椒が軌道に乗ってからは、吹屋の町並みを守る方法の一つとして会社経営を頑張るという考えを持つようになりました。
商品で地域の魅力を発信する以外に、私自身がここで暮らせるようになり、会社としても自立できれば、雇用や景観の再生や空き家の活用というように活動が広がります。それこそが、町並みを守る方法の一つです。
さとう紅商店の店舗は空き家を改装して利用しているのですが、少しずつでも同じように空き家を活用して事業をする人が増えていけばと思ってやっています。
現在は町並みの半分ほどが空き家で、高齢化による人口減少に危機感を覚えることもありますが、売上の余剰分を町に還元するなど、町並みを守るために頑張るという気持ちで会社経営をしています。
人と人を繋げるイベントスペース「山びらき」で吹屋の魅力を発信
「山びらき」というイベントスペースをさとう紅商店の隣にオープンしました。
吹屋でなにかしてみたいという人と、吹屋にいる人とを繋げる場所として、無料スペースとして開放しています。
吹屋って「こんな場所」で「こんな人達」がいて「こんな魅力」があるよというのを知ってもらいたい。
吹屋のこの環境の中で、地域の人やお客さんとのんびりお話しながら、自分の仕事を発信できる場所のような気持ちで来てもらえたらいいと思って「山びらき」をオープンしました。
新しい人が過ごして、巣立つための場所を作りたい
吹屋は毎日のお客さんがくるという場所ではなく、日によって来る日もあれば来ない日もあります。
正直、吹屋で一旗あげよう!と意気込んで商売しに来た人はガッカリしてしまうかもしれません。
町で過ごしたり、商売するイメージを作れたりするような、そんな吹屋のありのままを知ってもらえる場所として「山びらき」を提供しています。
コミュニティを持っているといろんな人が集まる、人が集まると繋がりが生まれてまたコミュニティが広がる、吹屋に必要なのはこういう循環なのかなと思うんです。
山びらきという名のとおり、新しい人が過ごして、巣立つための場所みたいになればいいなと思っています。
自分なりにできることを模索中
佐藤拓也の拓は開拓の拓なので、名前に習って山を開く、里山を開くのが自分の使命だと思って、町並みを守り、魅力を発信していくために自分なりにできることを模索中です。
空き家を活用したり、隠れていた地域資源を特産品に加工して届けていったり、山開きを使って地域の人と外の人を繋げたり、開拓できることは山ほどあります。
自分たちが歳を取って隠居するときに、色んな人と繋がって、楽しく過ごせるような開けた町にしていきたいと思っています。
面白いことにどんどん挑戦していきたい
会社経営が順調に進んで売上が大きくなっても、利益や権利を独占したいという考えは持っていなくて、面白いことにどんどん挑戦していきたいと考えています。
実は田舎の先輩後輩みたいな縦社会や組織での組み立て方などに苦手意識がありました。例えば、みんなが右を向いているときは左を向いて考えるのが僕の役目だと思っています。違った視点から柔軟に地域を見て、人と違うことをして喜ばせたい、窮屈さを無くしたいという想いがあるんです。
会社を経営すると、そちらに集中してしまい、これまでおこなっていた地域おこし活動がどんどんできなくなっていくのですが、できるから良い、できないから悪いじゃなく、時間がある人は時間を、売上がある人はそのお金の一部を支援したりと、それぞれできる範囲で協力すればいいのかなと考えるようになりました。
それぞれが持つ資源を少しずつ集めることで、うまく循環していって、活気ある楽しい町になっていくんじゃないかとワクワクしながら過ごしています。
趣味や休日の過ごし方
趣味はバドミントンをずっとやっています。
私は今年38歳なのですが、バドミントンへ行くと20代の若い子にボロボロに全然負けるんです。「調子悪いっすね」とか年下に言われたりして。
経営者を長くやっていると、年下に冷やかされるような経験は中々できないので、悔しい経験を得られるのが新鮮で、毎回とても楽しんでいます。
体力的にも技術的にも負ける相手に、どうやったら勝てるかとか考えさせられるのも楽しくてやめられません。
休日は、家族で車中泊をするのにハマっています。
金曜の夜くらいに、空いてる自家用車に布団を積み込んで車中泊仕様にして乗っています。
5人家族なのでホテル代の節約にもなるし、なにより家族の時間をゆっくり過ごせるのでハマっちゃって、時間があればしょっちゅう車中泊しています。
吹屋でおすすめのお店
ネパール人のジェイさんがやっている黄色い台所のカレー屋さんがおすすめです。
さとう紅商店の斜め前にあって、朝いくとスパイスの良い香りがして、その香りでお腹が空いてきて、気持ちが掴まれてしまっています。
特に裏メニューのカレー弁当というのがあり、畑仕事のときに外で食べたり、お客さんが来たときにプレゼントしたり、頻繁に活用しています。
もちろんお店でも食べられるので、ぜひ一度黄色い台所のカレー屋さんで食べてみてほしいですね。
さいごに
”株式会社さとう紅商店”を通して、「吹屋の町並みを守りたい」という想いで活動を続ける佐藤拓也さん。
吹屋を愛する想いは「赤い柚子胡椒」やイベントスペース「山びらき」とともにますます広がり、活気ある魅力的な町へとなっていくでしょう。
この度はインタビューにお答えいただきありがとうございました。今後の活躍を応援しています!
コメント